望郷いなか詩

田舎に燦々といきたい

母心緒


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母心緒


飾り棚に二枚の硝子板

冬曇りを拒否するように白

35枚目に飾った硝子板に娘はあの日のまま

一緒に歩いた夫は70枚目に微笑みをうかべる


モビール硝子棒は乾燥した音をたてカランカラン 
額は追憶を硝子棒に下した

大気の切れ味に過去へ捻れない老境はカランカラン回転 

上目で頷き夕暮れを腹でとらえる


90枚に達した厚みは曇りガラス

時のベッドにしなやかな白髪はめぐる

91枚目の硝子板は鏡

 


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